石巻レポート vol.4
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今朝も寒い。
昨夜から強い浜風が吹き、何度も目が覚めた。
夜中に飛ばされたテントもたくさんあったようだ。
止まない風に作業はしんどいものになるだろう。
8:00
全体ミーテイング。
このNGOでは基本的に100名のボランティアが一週間単位で入れ替わる。
肉体的にきつい作業も多く、テント生活で満足な食事もできないうえ、風呂にも入れず、トイレも不便。そういった状況の中、人に迷惑をかけずに支援サービスを提供できる限界を一週間と定めてチームを入れ替えている。
今日はその切り替わりの日にあたるため、新しいスタッフへ心構えや注意事項が説かれた。
10:00
炊き出しの準備をするスタッフ。
フレンチレストランのOシェフから託されて東京から運んできたカレー。
Oさんは普段から北海道の廃棄食材の問題に取り組み、それらを仕入れて自らの技術で極上のカレーに仕立て直し、パック詰めして北海道へ送り戻している。
天ぷら職人Kさんには寸胴を提供していただいた。
KK料理事務所さんからはよく切れる包丁を提供していただいた。
食をただの食料とは考えない人たちからの贈り物である。
10:30
ライターNさん夫妻とNGO共同代表のYさん、普段は国連大学でカメラをまわすMさんを車に乗せ、市内中心部でボランティア活動中のグループの取材に向かう。
12:00
市内黄金浜へ炊き出しに向かう。
炊き出しの場所とさせていただいたお宅の庭先には、ブルーシートを被せた箱が大量に積まれてあった。
菓子パンやおにぎり、みかんにジュース等、どうしたことか、中身が入ったままだ。
尋ねてみると、2日程前から自衛隊がこの辺り一帯の住民への配給品をまとめてこちらのお宅に置いていくのだという。
この地域も震災後2週間を境に避難所を離れ、水没を免れた自宅2階で暮らす人が現れ始めたそうだ。
しかし、どこの家にいつ人が戻ってきているのか住民同士皆目見当がつかない。
電気やガスもなく、夜は灯がともらず、昼間も外出する人はあまりいないからだ。
治安も不安定であまり出歩く気にはなれないという。
町には虚実混淆の情報が錯綜している。
この2日前には警官が刺されて亡くなったというニュースが広がった。ボランティアのベースキャンプでも信じられていたこの話がデマだったとわかったのは私が東京へ戻ってからのことだった。
そのような訳で、こちらのお宅としてもみなさんの分の配給品があるということを伝える術がないし、点在する住民のみなさんも知る術がない。
配給部隊としてもまとめて置いていく以上のことは難しい。確かに指定の避難所は別にあるのだから。
だけれども、自宅で暮らしたい気持ちはよくわかる。
水没した後であろうが、壁が崩れて危険だろうが、皆、様々な決断をするのだ。
箱の中身をよく見ると賞味期限ギリギリのものが多い。
こちらのお宅の方もこれが毎日届けられると困ってしまうと言う。
NGOスタッフが顔を見合わせる。
炊き出しのカレーの横にこれらの配給品をずらりと並べた。
まずは手分けして、各通りへの声掛けである。
「フレンチシェフの特製カレーをご用意しました、お集りくださーい」
「パンやおにぎり、ジュースもありまーす」
しばらくすると炊き出しの前に人の列ができた。
家族の分もと、鍋を抱えていらした方も多い。
カレーはあっという間になくなった。
その場で召し上がる方もいらして、おいしい、ありがとうと仰っていただいた。
配給品はありがたいのだけれど、パンばかり食べるのはつらいという。
おにぎりもすぐに固くなるし喉を通りづらい。
たかだか3、4日、ボランティアベースキャンプで過ごしただけの私ですらそう思う。
やはりなるべくおいしいもの、温かい食べ物をご提供してあげたい。
贅沢と言われるかもしれないがそうではないと自分は思う。
錆びた包丁でおいしいものはできない。
磨かれた包丁で、ちゃんとした鍋で煮炊きして、丁寧な味で、野菜や動物性タンパク質をきちんと取り込む。
食料ではなく人の食事。
非常と日常が入れ子になっている今だから、より鮮明に浮かび上がる大事なこと。
口にすれば細胞が理解する。
気力が湧いてくる。
個人的にはさらにバラエティ豊かに欲を満たす食がここに増えていいと思う。
たこ焼きでもBBQでもいい。不謹慎なことはないと思う。
自転車で走り回って遊んでいる子ども達だってたくさんいるのだから、その子たちに「やったー、たこやき。うまそう!」と言ってもらいたい。
炊き出しに寄ると、併せて配給品の箱から食料や物資を持ち帰っていかれる方が相当数いらした。
この時初めて配給にカセットコンロ用のガズボンベがあることを知った方もおられた。
「同じ釜の飯を食う」ことをきっかけに、崩れかけた地域のつながりを再構築できるのかもしれない。
賞味期限が危うい配給品に関しては、炊き出しの道具を回収する車が点検し持ち帰るよう、今後もそうするようにと、NGO現場リーダーがすぐに電話指示をいれていた。
炊き出しとは食料支援と似て非なるものだと知る。
15:00
ベースキャンプに戻る。
私は今日で一旦この地を後にする。
帰京する車の同乗者が決まらないためしばらく待機。
17:00
ライターNさんはまだしばらく残ることになった。
持ち合わせの風邪薬やトイレットペーパーなどを渡す。
Nさんの奥さんを乗せ2人で東京へ向け出発。
0:30
東京着。街は暗い。
節電は良いが自粛ばかりではよろしくない。
今後も機会をつくって何かしらの支援や取材を続けていこうと思う。
この4日間で感じたことは改めて整理して綴りたいと思う。
宮崎 純一
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