伊勢の海人(あま)の 朝な夕なに 潜(かづ)くといふ 鮑(あわび)の貝の 片思(かたおもひ)にして (作者不明 万葉集 巻十一 二七九八)
伊勢の海人が朝ごと夕ごとに潜って捕るという鮑の貝のように、私の恋もずっと片思いのままだなぁ。
写真は三重県鳥羽市国崎(くざき)町。
「海の神様が宿る町」「海女発祥の地」と呼ばれています。
万葉時代から人との繋がりの深かった鮑。
神話の時代から日本の歴史に登場しており、倭姫命(やまとひめのみこと)がこの地を訪れた際に海女から差し出された鮑に感動し、毎年伊勢神宮に納めるよう命じたそうです。さらに、腐らないように薄く切って乾燥させて保存することを海女から聞かされ、それも納めるように命じたそうです。
鮑をひも状に細く剥き、乾燥させ、生乾きのうちに棒で伸ばす。
この作業を「のす」といい、熨斗の字を当てます。お祝い事に欠かせない「のし袋」や「のし紙」の熨斗(のし)の名の由来となっています。
のし袋やのし紙の右肩に六角形の色紙の中に黄色いものが描かれていますが、これが熨斗鮑の簡略化された形とされています。
国崎町では今でも伝統的な熨斗鮑づくりが行われており、伊勢神宮で行われる6月と12月の月次祭(つきなみさい)、そして10月の神嘗祭(かんなめさい)に献上する儀式が受け継がれています。
他にも、毎年7月1日(旧暦6月1日)に熨斗鮑をつくる鮑採取の儀式である御潜(みかづき)神事など数々の儀式が伝承されています。
(注:今年の御潜神事は震災を考慮し自粛予定)
さて、「磯の鮑の片思い」のことわざですが、一見して二枚貝の片方がないように見えることから「片重い」「片思い」の象徴とされたそうです。
ですが、実際は巻貝の仲間らしいですね。
なんにせよ、、あわび食いてぇー。
参考:
宮崎 純一